2024年11月5日火曜日

第182回現代俳句協会青年部勉強会 「名付けから始めよう 平成・令和俳句史」

【企画概要】

近年の俳壇で俳句史について言及された3つの文章・論を挙げてみます。

「平成の俳句というのは、どちらかというと新風を目指すエネルギーが全体的に低いような時代だったと思うんです。」(角川「俳句」2024年3月号特集「昭和の俳句」川名大インタビューより)


ある座談会で「俳壇無風」と述べたところ、参加者の中には賛同していただける人、やや懐疑的であった人もいた。しかしそれを確認するためには、現在の俳壇が無風か否かを論じるだけではなく、俳壇史、特に近代以降の俳壇の流れの中でどのような推移をたどったかをみてみる必要があると思う。

(中略)

そこで「俳壇無風」論としてはやや迂遠であるが、まず近代俳句開始後の125年にわたる近代俳句史を眺めてみたいと思う。便宜として四半世紀ごとに分けて考えてみる。その時代時代の風力も掲げてみる

(中略)

【第5期】一九九六年(平成8年)〜二〇二〇年(令和2年)

【メルクマール】困ったのはこれを書いていて、この時期、メルクマールとなる事件が見当たらないことである。平成8年前後には何の俳壇史に掲げる事件もなかった

(中略)

【第6期】二〇二一年(令和3年)現在

ここで現在を眺めてみる。この前の結社誌の激減、総合誌の終刊に続き、三協会の会員数も令和3年(現在)はすべて減少しているのが象徴的だ。兜太、汀子、狩行のトップは亡くなるか、表舞台に立てなくなっている。これを風力0(むしろ逆風)の時代に入ったといっても良いかも知れない。冒頭「俳壇無風」と予言した理由である。

(筑紫磐井『戦後俳句史nouveau1945-2023(ウェッブ、2023)』の第3章第4節「俳壇無風論」)


Ⅲ 

神野 俳句史には論じて名前を付けていく人が必要だと、筑紫さんの本を読んで、あらためて思いました。山本健吉は「人間探求派」と括りました、大野林火が「社会性俳句」を広げました、というように、作家が作品を生み出す段階と、それが表現史に接続していくあいだには、批評的な目と文章が必ず必要ですね。

筑紫 お互いのキャッチボールが必要なんです。

(中略)

筑紫 だいたいネーミングっていうのは、最初はいい加減なんですね。ムードで使い始めるから。金子兜太は前衛って言葉が出た途端に、そうだ前衛だって言っているけど、五年程たったら、前衛なんてあれはうそだ、って勝手に言っちゃうくらい、非常にいい加減なところもありますが、外の人からみる場合に名前をつけてくれると議論がしやすくなる、ということはある。なにかそういうきっかけが現在の評論の世界でも出てくればなと思っています。

※以降、鼎談内に「シン・社会性俳句」「オブジェクト俳句」「超然派」「だれもいない静かな世界」「トリビアル偏愛派」「参照性」「人生から言葉へ」「無風清澄派」「口語人間肯定派」「透明な私」「子育ての現場」「老いという未知の領域」などのキーワードが登場

(2024年版「俳壇年鑑」鼎談 俳句史という視座――俳壇展望 神野紗希・筑紫磐井・中村雅樹)


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山本健吉なき時代、「初めはいい加減でもいい」なら、みんなで試しに名前をつけてみませんか?「事象を正確に言い仰せる」ことよりも、名付けにより俳句愛好家たちの想像を膨らませ(なんだか俳句そのものみたいですね!)、俳句史の新たな議論の種を作り出すことを目標に、勉強会を実施してみたいと思います。

昭和64年間に比して、平成+令和は35年。昭和の約半分の歴史の重みが俳句史にあるかどうかを検証・深掘りします。前半ではパネリストの皆さんに、平成・令和時代の俳句史の一つの事象に注目していただき、それに名前をつけていただきます。後半ではパネリストの皆さんと同様の質問を提示した一般公開アンケート(任意)の結果をみなさんで眺めてみましょう。


【場所】

Zoom(後日オンラインアーカイブを配信)

【日時】 

12月28日(土)19時〜21時30分


【パネリスト】 

赤野四羽(「蘖俳句通信」、「楽園」)

柳元佑太(「澤」)

岩田奎(「群青」)

進行:現代俳句協会青年部


【参加費】

500円(高校生は無料)※青年部活動のため、カンパも募らせていただきます

【タイムテーブル】

19:00-19:10 あいさつ・パネリスト紹介・企画趣旨紹介 10分

19:10-19:25 基調発表1 (赤野四羽)

19:25-19:40   基調発表2  (柳元佑太)

19:40-19:55   基調発表3  (岩田奎)

19:55-20:10   クロストーク・会場質問 

20:10-20:25   休憩

20:25-21:15   アンケート回答閲覧

21:15-21:25   まとめ

【お申し込みURL】

https://forms.gle/UfjUpGYVpEFBYtMG6


【パネリストとみなさんへのアンケート質問】

① 平成・令和時代に起こった俳句に関する事象(俳句そのものor俳句にまつわる出来事。俳句の場合は複数挙げても可)を1つ挙げてください

② ①の事象をあなたが取り上げたい理由を教えてください

③ ①の事象に名前をつけてください

④ 備考(その他伝えたいこと)


〈解答例1〉

① 四肢へ地震ただ轟轟と轟轟と 高野ムツオ

② 大震災の体験を鮮烈な状態で俳句史形式に刻むために、時として季語に囚われない

③ 「語り部派」

〈解答例2〉

① 俳句甲子園(平成10年から今年で27回)

② 20〜40代の若手俳人の多くが参加。若手の俳壇への導入となる一方で、俳句でありながら内面から静かに俳句を崩壊させている。

③ 内面的俳句ダダイズム


【事前アンケートURL】

https://forms.gle/rMQ2iCnEbV1McShc7 


【問い合わせ先】

genhai.seinenbu@gmail.com


皆様のご参加をお待ちしております!
現代俳句協会青年部